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OUR SCIENCE

CASE 1

トランスレーショナル研究のための
イメージングバイオマーカー開発

  • 阿部 浩二
    阿部 浩司
    あべ こうじ
    バイオマーカー研究開発部
    トランスレーショナルリサーチユニット
    イメージングマーカーグループ グループ長

トランスレーショナル研究は、探索研究から臨床開発への橋渡し研究で、臨床試験実施のGo/No Goの早期判断や確実な概念実証 (POC;Proof of Concept)の取得に必要な研究です。トランスレーショナル研究の最も重要な手法であるバイオマーカーの活用はPOM(Proof of Mechanism)、POCの取得、及び患者層別化など医薬品開発の効率化において必須なものとなっています。

イメージングマーカーグループでは主にPET(陽電子断層法)、SPECT(単一光子放射断層法)、MRI(核磁気共鳴画像法)などの臨床診断に広く活用されているイメージング技術を用い、新薬候補化合物の薬物動態や薬理学的特性を明らかにし、新薬の最適投与量の推定や薬効評価などを行なっています。また、適応患者層の推定や病態をモニタリング可能なイメージングバイオマーカーの探索やその測定、解析法を研究しています。PETは様々な放射性化合物いわゆる分子プローブを用いることでターゲット分子の生体内挙動を定量的に画像化できることから、既存分子プローブだけでなく、創薬ターゲット分子に対する新規分子プローブを創製し、化合物の占有率の測定などを実施しています。この過程ではげっ歯類から霊長類研究を基礎に、ヒトマイクロドーズ試験で新規分子プローブの有用性を検証し、開発候補品の評価に活用しています。MRI研究では疾患病態、及び薬理作用や作用機序を明らかにする手法を構築し、新薬候補化合物の評価を進めています。特に、functional MRIを用いた脳機能イメージング研究では、神経活動や脳機能ネットワークを指標としたイメージングマーカー研究を実施しています。

霊長類脳におけるPET分子プローブの集積

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ラット脳におけるDefault Mode Network

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参考文献

1.Kohji Abe, Nozomi Takai, Kazumi Fukumoto, Natsumi Imamoto, Misato Tonomura, Miwa Ito, Naoki Kanegawa, Katsunori Sakai, Kenji Morimoto, Kenichiro Todoroki and Osamu Inoue

In vivo imaging of reactive oxygen species in mouse brain by using [3H]Hydromethidine as a potential radical trapping radiotracer
J Cereb Blood Flow Metab. 2014 Dec;34(12):1907-13.

https://doi.org/10.1038/jcbfm.2014.160

2. Yuto Kashiwagi, Takemi Rokugawa, Tomomi Yamada, Atsushi Obata, Hiroshi Watabe, Yoshichika Yoshioka and Kohji Abe

Pharmacological MRI Response to a Selective Dopamine Transporter Inhibitor, GBR12909, in Awake and Anesthetized Rats
Synapse. 2015 Apr;69(4):203-12.

https://doi.org/10.1002/syn.21803

3. Sotaro Momosaki, Miwa Ito, Hiroko Yamato, Hitoshi Iimori, Hirokazu Sumiyoshi, Kenji Morimoto, Natsumi Imamoto, Tadashi Watabe, Eku Shimosegawa, Jun Hatazawa and Kohji Abe

Longitudinal imaging of the availability of dopamine transporter and D2 receptor in rat striatum following mild ischemia
J Cereb Blood Flow Metab. 2017 Feb;37(2):605-613.

https://doi.org/10.1177/0271678X16635183

4. Nozomi Takai, Natsumi Miyajima, Misato Tonomura, Kohji Abe

Relationship between receptor occupancy and the antinociceptive effect of mu opioid receptor agonists in male rats
Brain Res. 2018 Feb 1;1680:105-109

https://doi.org/10.1016/j.brainres.2017.12.014

5. Takemi Rokugawa, Haruyo Konishi, Miwa Ito, Hitoshi Iimori, Ryohei Nagai, Eku Shimosegawa, Jun Hatazawa and Kohji Abe

Evaluation of hepatic integrin αvβ3 expression in non-alcoholic steatohepatitis (NASH) model mouse by 18F-FPP-RGD2 PET
EJNMMI Res. 2018 31;8(1):40.

https://doi.org/10.1186/s13550-018-0394-4

CASE 2

トロイの木馬:新規シデロフォアセファロスポリン薬の発見

  • 山野 佳則
    山野 佳則
    やまの よしのり
    医薬研究本部 研究本部長席
    感染症領域 シニアフェロー

細菌の薬剤耐性化による有効な抗菌薬の欠如は現代医療において最も深刻な問題の一つとなっており、特に、カルバペネム耐性の緑膿菌、アシネトバクター、腸内細菌群細菌は世界保健機関(WHO)においても、新規抗菌薬の開発が必要とされるもっとも重要な病原菌として取り上げられています。当社では、この課題を克服するために、能動的な鉄取り込み経路を介して強固な外膜透過障壁を速やかに透過するともに、カルバペネム薬を含む広範なβラクタム薬分解能を有するカルバペネマーゼに対して高い安定性を有するという2つの特徴を持つ新規シデロフォアセファロスポリン薬cefiderocol (S-649266)を創製し、問題とされているカルバペネム耐性菌に対して高い抗菌活性を有することを明らかとしてきました。これまでに見出されてきた多くのシデロフォアβラクタム薬とは異なり,複雑性尿路感染症患者を対象とした臨床試験において高い有効性を示すこと、カルバペネム耐性グラム陰性菌による感染症モデルにおいて高い治療効果を示す非臨床評価試験が積み上げられてきていることから、既存の抗菌薬では治療効果が得られないグラム陰性菌感染症の新たな治療選択肢としての期待がさらに高まっています。尿路感染症に続く新たな臨床試験も進行中であり、米国における承認申請が2018年内に計画されています。

cefiderocolのほかにも、従来とは異なるメカニズムで作用することによって1度の服用で高い治療効果を示す新規インフルエンザ治療薬baloxavir marboxil (S-033188) の日本における承認取得,米国における承認申請が2018年上期において達成され、シオノギの感染症治療薬創製に対する取り組みによる数多くの実績が創出されています。このような感染症領域における革新的な創薬への取り組みはこれからもたゆまなく続けられます。

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参考文献

1. In vitro antibacterial properties of cefiderocol, a novel siderophore cephalosporin, against Gram-negative bacteria.

Ito A, Sato T, Ota M, Takemura M, Nishikawa T, Toba S, Kohira N, Miyagawa S, Ishibashi N, Matsumoto S, Nakamura R, Tsuji M, Yamano Y.
Antimicrob Agents Chemother. 2017 Oct 23. pii: AAC.01454-17.

http://aac.asm.org/content/62/1/e01454-17.long

2. Efficacy of Cefiderocol against Carbapenem-Resistant Gram-Negative Bacilli in Immunocompetent-Rat Respiratory Tract Infection Models Recreating Human Plasma Pharmacokinetics.

Matsumoto S, Singley CM, Hoover J, Nakamura R, Echols R, Rittenhouse S, Tsuji M, Yamano Y.
Antimicrob Agents Chemother. 2017 Aug 24;61(9). pii: e00700-17.

http://aac.asm.org/content/61/9/e00700-17.full

3. Susceptibility of Imipenem-Susceptible but Meropenem-Resistant blaIMP-6-Carrying Enterobacteriaceae to Various Antibacterials, Including the Siderophore Cephalosporin Cefiderocol.

Kanazawa S, Sato T, Kohira N, Ito-Horiyama T, Tsuji M, Yamano Y.
Antimicrob Agents Chemother. 2017 Jun 27;61(7). pii: e00576-17.

http://aac.asm.org/content/61/7/e00576-17.long

4. Siderophore Cephalosporin Cefiderocol Utilizes Ferric Iron Transporter Systems for Antibacterial Activity against Pseudomonas aeruginosa.

Ito A, Nishikawa T, Matsumoto S, Yoshizawa H, Sato T, Nakamura R, Tsuji M, Yamano Y.
Antimicrob Agents Chemother. 2016 Nov 21;60(12):7396-7401.

http://aac.asm.org/content/60/12/7396.full

CASE 3

世界に先駆けたFIC:新規インフルエンザ薬
バロキサビルの開発

  • 宍戸 貴雄
    宍戸 貴雄
    ししど たかお
    創薬疾患研究所 感染症・免疫部門
    呼吸器ウイルス感染症グループ グループ長

インフルエンザウイルス感染症は、毎年冬季を中心に世界中で流行し、高齢者での死亡や、インフルエンザ脳症に代表される乳幼児における合併症を引き起こす等、大きな社会問題となっています。既存のノイラミニダーゼ阻害薬は、ウイルス粒子が感染細胞外に遊離されるステップを阻害することで抗ウイルス活性を発揮しますが、ハイリスク患者や重症患者で明確な治療効果を示した例が限られていること、ノイラミニダーゼ阻害薬に対する感受性低下ウイルスが流行する恐れがあること等、医療や公衆衛生上のニーズを残しています。またノイラミニダーゼ阻害薬の経口薬は5日間の投与が必要であり、吸入剤の使用は吸入可能な患者に限られています。

このような背景から、有効性が高く、簡便に投与可能な新規治療薬が必要とされています。当社の宍戸貴雄を始めとする感染症研究グル―プは、これまでの抗インフルエンザウイルス薬とは全く異なる作用機序の薬剤創製に取り組み、S-033188 (一般名:バロキサビル マルボキシル) を見出しました。バロキサビル マルボキシルはインフルエンザウイルス特有の酵素であるキャップ依存性エンドヌクレアーゼを阻害し、ウイルスのゲノムRNAを転写する反応を特異的に阻害します。

図:バロキサビル マルボキシルの活性体(BXA)と標的タンパク質との共結晶構造(参考文献1参照)

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結果として、ウイルス感染細胞内で新たなウイルス粒子形成に必要なタンパク質合成が阻害され、抗ウイルス活性を発揮します。ウイルスを感染させた細胞やマウスを用いた非臨床試験で、バロキサビル マルボキシルは季節性や高病原性鳥インフルエンザウイルスの増殖を抑制し、マウスの致死率を改善しました。ヒト臨床試験において、一回の経口投与で体内から速やかにウイルスを消失させ、インフルエンザ罹病期間を短縮する効果が認められました。以上の結果、バロキサビル マルボキシルは2018年2月に日本にて承認されました。

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参考文献

1. Omoto S, Valentina Speranzini, Hashimoto T, Noshi T, Yamaguchi H, Kawai M, Kawaguchi K, Uehara T, Shishido T, Naito A, Cusack S.

Characterization of influenza virus variants induced by treatment with the endonuclease inhibitor baloxavir marboxil.
Scientific Reports (2018) 8:9633| DOI:10.1038/s41598-018-27890-4

https://www.nature.com/articles/s41598-018-27890-4

2. Noshi T, Tachibana H, Yamamoto A, Baba K, Kawai M, Yoshida R, Sato A, Shishido T, Naito A.

S-033447/S-033188, a Novel Small Molecule Inhibitor of Cap-dependent Endonuclease of Influenza A and B Virus: In Vitro Antiviral Activity against Laboratory Strains of Influenza A and B Virus in Madin-Darby Canine Kidney Cells. P-418 OPTIONS IX. (2016)

3. Ando Y, Noshi T, Kitano M, Taniguchi K, Onishi M, Sato K, Oka R, Kawai M, Yoshida R, Sato A, Shishido T, Naito A.

2016. S-033188, an Orally Available Small Molecule Inhibitor of Cap-dependent Endonuclease of Influenza A and B Virus: In Vivo Viral Load Reduction by Single Day Oral Dosing in Mice Infected with Influenza A Virus. P-610 OPTIONS IX. (2016)