

- 感染症領域では、細菌、真菌、ウィルスなどに起因する各種感染症に対する治療薬の創製を行っています。近年は、種々の多剤耐性菌の出現、真菌感染症の増加、新型インフルエンザやHIVなどの新たなウィルス感染症の発生等、治療の難渋化を引き起こす多くの感染症が新たな問題となっています。これら多岐にわたる感染症に対する治療薬を見出すために、各々の病原体に対して有効に働くとともに、副作用の無い画期的な新薬創製を目指した探索活動を進めています。

- MS(メタボリックシンドローム)領域では、糖尿病、高脂血症、肥満、動脈硬化などの代謝性疾患に対する治療薬の創製を行っています。近年、日本でも食生活の欧米化や運動不足などにより、代謝性疾患患者が増加しています。我々は、代謝性疾患発症に関与する標的分子を見出し、その探索研究を行うことにより、代謝性疾患に苦しむ患者さんが待ち望む画期的な医薬品を創製して、心血管イベントフリーな世界を目指します。

- 疼痛領域では、炎症性、侵害受容性および神経障害性疼痛に対する新たな治療薬の創製に取り組んでいます。痛みは、生体防御のシグナルという点からは重要な生理機能の一つですが、過度の痛みは精神的な苦痛を引き起こすのみではなく、通常の生活にも支障を引き起こすことは皆さんも十分に承知の通りです。特に、癌性の痛み、関節炎、腰痛や神経痛など今も多くの患者さんが悩んでいます。さらに日本では、欧米に比べ麻薬性鎮痛薬が敬遠され十分に使用されていないことが痛みの治療の問題点として挙げられています。そこで、麻薬性鎮痛薬の適正使用や副作用の軽減を目指した研究も疼痛領域の課題の一つです。これらの研究により、すべての病的な痛みから患者さんを解放し、“ペインフリー”を実現することが私たちの目的です。

- フロンティア創薬領域はその名の通り、既存の薬では満足していない疾患や病態を探索し、既成概念に囚われないオリジナリティの高い創薬コンセプトで治療薬の探索研究を行う部門です。
特に、免疫、アレルギー疾患グループは、世界初の作用機序を持った喘息治療薬およびアトピー性皮膚炎治療薬の開発を手がけるなど、チャレンジ精神旺盛です。アレルギーおよび癌においては、免疫療法にいち早く取り組み開発品を複数手がけている点も特長です。また、神経変性疾患、精神疾患などアンメットニーズの高い疾患を対象とした画期的新薬の創製も大きな目標の一つです。
そのために、外部研究機関との共同研究も推進し、新規創薬ターゲット探索、疾患バイオマーカー探索などを通じて新しい創薬コンセプトの実現を目指しております。次世代の塩野義を担う責任ある領域であることを誇りに思いながら、フロンティア精神旺盛な創薬研究を展開しております。

- どのような生体分子をターゲットにすれば、どのような疾患の薬が創れるか?それを考えるところから新薬の研究は始まります。基盤技術系部門では、ゲノム情報やモデル動物を用いた解析を通じて、受容体や酵素といった創薬ターゲットの探索を行います。見出されたターゲット候補分子が病態に関連している事が確認されると、膨大な化合物ライブラリから最先端のアッセイ技術を駆使して「新薬の種」となる化合物が選出されます。基盤技術系部門は、疾患モデル動物の作出・育成、病理組織化学、構造生物、分子イメージング、抗体工学、核酸工学、蛋白解析などの機能も備え、薬理系部門と化学系部門が主導する創薬研究を技術側面から支えています。また核酸医薬・抗体医薬などの高分子医薬に関する研究も行っています。

- 薬理評価部門は、感染症、代謝性疾患、疼痛神経系やアレルギー・癌のフロンティア創薬領域の4領域をベースとしたそれぞれの疾患のエキスパートの集りです。薬理評価部門の研究は、疾患の特性を見極め、どのような分子をターゲットとして、どのような薬を創れば良いかを提案するところから始まります。“新薬の種”を薬に育て上げていく過程では、先ずは薬効を正しく迅速に評価することが最重要となります。薬理評価部門では、高度な専門知識に裏付けられたin vitro評価系やin vivo動物モデルを駆使して、化合物の特徴を最大限に引き出し、開発化合物へと仕上げていきます。薬理評価部門は、薬の生まれる過程にもっとも長く関わることから、薬作りへの情熱が何よりも大事になります。

- 化学系部門では「新薬の種」となる化合物に対して様々な構造修飾を行い、薬理活性・薬物動態・安全性・物性を最適化して患者さんの待ち望む医薬品へと成長させていきます。従来のメディシナルケミストリーに加え、最近では標的タンパク質との複合体構造解析、コンピューターを用いた薬物動態予測などの最新技術を駆使して化合物をデザインし、最新の合成・精製機器やパラレル合成技術を用いることで、短期間で質の高い候補化合物を創製します。また、核酸創薬等の新しい分野にも挑戦しています。

- よりよい新規医薬品を創製するためには、候補となる化合物の物性をはじめとするプロファイルを明らかにするとともに、安全性、薬物動態、薬効薬理等の非臨床試験及び臨床試験により、医薬品としての価値を確認していくことが重要です。分析化学研究においては、探索、創薬、開発、申請、市販後の幅広いステージにおいて、その価値確認に必要な構造解析、物性評価、品質評価,非臨床・臨床試験時の動物・ヒト生体試料中濃度測定並びに分析法・評価法の開発研究を、対応する法規制に則り迅速かつ的確に行うことにより、新薬開発に貢献しています。また、創薬研究支援のための分析化学的基礎研究や他部門との連携によるメタボノミクスやバイオイメージングなどの新規技術研究にも取り組んでいます。

- 薬物動態試験では、医薬品(の候補)が体の中でどのような運命をたどるのかを明らかにします。すなわち、どの程度吸収されるのか、血中濃度がどれくらい維持されるのか、どの臓器・組織へ運ばれるのか、どこでどのような形に代謝変換されるのか、どこから体外へ排泄されるのかを解明します。医薬品の候補は、優れた薬理効果を持っていなくてはいけませんが、それと同時に、ヒトで良好な体内動態を示すものでなければ、良い薬にはなりません。薬物動態の情報は、創薬の探索段階、高次評価段階、臨床試験の段階そして市販後の服薬ガイダンスまで、幅広く活用されます。特に、薬物相互作用の回避や個別化医療への貢献など、重要な役割を果たしていることにやりがいを感じつつ、日々頑張っています。

- 医薬品は確実な有効性を有すると同時に、高い安全性が担保されていることが非常に重要です。安全性研究部門では、細胞や動物を用いた様々な実験を行うことにより、開発化合物をヒトに投与した際の副作用を予測し、より安全な医薬品を創出することを目指し日々努力しています。国際基準のガイドラインに準拠した種々の安全性試験を実施し、開発化合物の安全性をGLPに則り評価するとともに、医薬品開発のより初期の段階で毒性をスクリーニング的に評価することにより、安全性面から開発化合物を選択することにも力を入れています。また、トキシコゲノミクスをはじめ毒性の発現メカニズム解明や新規評価系の確立などの基礎的研究も進行しています。
