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病気の知識

小児の感染症 − お腹が痛いよ~ お子さんがこんなとき、どうしたらよいでしょう?

ご自身やご家族の症状について、心配や疑問を持たれた場合には、ご自分で判断されずにお医者さんにご相談ください。

監修:慶應義塾大学医学部 感染制御センター 教授 岩田 敏 先生

お子さんが「お腹が痛い」と訴えたら

お子さんが「お腹が痛い」と訴えたら

ひとくちにお腹が痛いといっても、腹痛の原因となる疾患にはいろいろあります。今回はこどもによく起こるお腹の感染症(腸管感染症)のお話をします。 お子さんがお腹の痛みを訴えたら、熱はないか、下痢をしていないか、吐き気はないかをよく観察してあげてください。これらの症状がある場合、腸管感染症の疑いがあります。

腸管感染症にはこんなものがあります

腸管感染症は、細菌やウイルスといった病原微生物が人間の腸管内に侵入し、そこで増殖することによって発症する疾患です(中には、食物の中で増殖した細菌が毒素を産生し、その毒素を摂取することによって発症する場合もあります)。食べ物による食あたり(複数の人たちが同一食物を食べて起こる集団発生を“食中毒”といいます)や、冬に多い“お腹のかぜ”として一般に知られています。

腸管感染症を起こす病原微生物にはいろいろな種類があります。細菌では赤痢菌、コレラ菌、サルモネラ菌、カンピロバクター、腸炎ビブリオ、ポツリヌス菌、チフス菌、パラチフスA菌、O157で知られる腸管出血性大腸菌、赤痢アメーバ、黄色ブドウ球菌などです。ウイルスではロタウイルス、ノロウイルスが代表的です。

腸管感染症にはこんなものがあります

お腹の感染症の症状は

お腹の感染症の症状は

感染性腸炎では、発熱、下痢、腹痛、嘔吐などの症状のほか、ときに悪心もみられます。

下痢をしている場合、便の性状(水っぽいかどうか)や色(血便、緑色便、白色便)は診断の重要な手がかりとなります。たとえば、血便が出ていれば、腸管出血性大腸菌、カンピロバクター、サルモネラ菌などの腸管系の病原菌が原因となる可能性が高いのです。

発熱も特徴的な症状です。サルモネラ菌やカンピロバクターによる感染症では、38℃以上の高熱や胃腸症状が長引くことが多く、まれに血液の中に菌が侵入して菌血症を起こすこともあり、重症化するおそれがありますので特に注意が必要です。
腸炎ビブリオやノロウイルスでは、下痢のほか、悪心や激しい嘔吐がみられるのが特徴です。

感染性腸炎では、悪心や激しい嘔吐がみられるのが特徴です。

早めの受診が大切

早めの受診が大切

腸管感染症は放っておくと重症化することもありますので、疑わしい症状があれば、早めに受診しましょう。特に乳幼児のお子さんでは、ぐったりして泣いてばかりいたら、お腹の痛みを訴えているサインかも知れませんので、注意してあげてください。

受診の際には、 嘔吐物や便などをビニール袋などに入れて受診先の病院に持参すると、診断の重要な手がかりになりますので、心がけておくとよいでしょう。

診断・治療について

診断・治療について

腸管感染症といっても、原因となる病原微生物によって治療法が少しずつ異なります。できるだけ早期に正確な診断をつけてもらうことが、治る早道といえます。

診断は、便培養と呼ばれる検査の結果で最終的に確定しますが、周辺情報として最近食べさせたものや周囲の発病者の有無なども診察のときに尋ねられますので、事前に思い起こしておくことも大切です。

最近の海外渡航歴も原因を探る重要な情報となります。海外では食生活が一変するため腸管感染症を起こしやすく、旅行地によってはコレラ菌などの強毒菌による感染症もあります。また、発病した本人でなくても、家族の誰かが海外旅行や海外出張で渡航している場合も注意しておかなくてはなりません。

下痢症状がある場合は、下痢を発症する前に抗生物質を服用していたかどうかも重要な情報です。抗生物質は、一般的な副作用として下痢症状などを起こすといわれているお薬だからです。その副作用の程度は、お薬によって異なりますが、中でもセフェム系抗生物質とよばれる系統のお薬は比較的下痢や軟便を起こす頻度が少ないといわれています。

治療は、軽症であれば一般的には自然に治癒しますので、原則的に症状を和らげる治療(対症療法)が主体となります。抗生物質は、原因菌を早期に除菌し、二次感染を防ぐ目的や、合併症を阻止するために必要に応じて処方されることがあります。 ただ、あくまでも患者さんの重症度をみて必要と判断した場合に限り使用することになります。

薬を飲むには注意が必要!

止痢剤(下痢止め)や制吐剤は、腸管内にある消化物の停滞を招き、感染症を起こしている病原菌や体内の毒素の排泄が遅れることがあるため、特に腸管運動を強く抑制するお薬は避けたほうがよいとされています。

家庭内で注意することは

下痢をしているときは脱水状態になりやすいので、まずは脱水の予防が重要です。

下痢をしているときは脱水状態になりやすいので、まずは脱水の予防が重要です。適度な塩分や糖分を含む飲み物(経口補液剤)によって、電解質や体液の調節と補充を行うことが大切です。なお、市販のスポーツドリンクなどには、塩分や糖分のバランスが適さないものもあり、脱水の改善には不十分な場合がありますので、医師に相談されるとよいでしょう。

嘔吐があるときは、吐きやすいように横向きに寝かせてあげ、窒息しないよう注意してあげましょう。 下痢症状があるときでも、安易に下痢止めを飲ませるのは腸管運動を抑制させ、原因菌や毒素の排泄を遅らせます。下痢止めや解熱剤は家庭にもありますが、医師に相談した上で、必要があれば使うよう心がけましょう。

嘔吐があるときは、吐きやすいように横向きに寝かせてあげ、窒息しないよう注意してあげましょう。

食事は最初のうちは制限されますが、症状が改善しはじめたら体力を回復させてあげるためにも少しずつ食べさせてあげてください。

食事は最初のうちは制限されますが、症状が改善しはじめたら体力を回復させてあげるためにも少しずつ食べさせてあげてください。
目安としては、水様の便のうちは、おもゆやお茶などの水分を中心にして、柔らかい便になってきたらおかゆなど、といったように便の状態にあわせて少しずつ固形の食べ物に変えていくとよいでしょう。

O157について

集団感染で全国的に有名になったO157などの感染力の強い病原菌が原因の場合には、二次感染を防ぐために、特にいくつか気をつけておきたいことがあります。たとえば、①お子さん(患者さん)の便の処理を行う際にはゴム手袋などを着用し、処理後は手を石鹸と流水でよく洗う、②患者さんの衣類は、家族のものとは別に洗い、日光に当ててよく乾かす、③入浴については混浴は避け、患者さんが一番最後に入るようにし、風呂の水は毎日取り替える、などです。

腸管感染症を予防するために日ごろ注意することは

食べ物の管理が重要です。

食べ物の管理が重要です。まず冷蔵庫を過信するのはやめましょう。冷蔵庫にものを詰めすぎたり、冷蔵庫内であっても食品を長期保存するのは禁物です。

調理前に手を洗い清潔な調理器具を使うのは当たり前のこと。調理は、加熱調理が食中毒予防に最も有効です(75℃で1分以上の加熱が目安)。 食事はできたらすぐ食べるようにし、室温に長く放置することはやめましよう。

手洗い・清潔・加熱

冷ましてからフタをしよう!

お弁当に、前日に調理したおかずを使用する際は、加熱してください。弁当箱に入れるときは、必ず冷ましてから入れることが大切です(意外に知られていませんが)。おかずが温かいうちにフタをすると食中毒の原因となる菌が増殖しやすい環境になってしまうからです。

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