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病気の知識

うつ病 − うつ病 ~こころのサイン からだのサイン

ご自身やご家族の症状について、心配や疑問を持たれた場合には、ご自分で判断されずにお医者さんにご相談ください。

はじめに

うつ病は、決してまれな病気ではなく、誰でもかかる可能性のある病気です。
近年の日本国内の調査では、約13人に1人が生涯のうちにうつ病を経験するといわれています。また、うつ病を発症していても4人に3人は治療を受けていなかったことが示されています。
うつ病の苦しさは、病気にかかった人にとっては大変なのですが、周囲から見るとさほどひどく映らないために放置されがちになってしまいます。
しかし、うつ病は患者さん本人をはじめ家族や友人、会社の同僚など周りの人たちがうつ病のサインに気づき、きちんと治療することで、回復できる病気です。
また、うつ病のサインには「気分の落ちこみ」などのこころのサインと、「不眠、からだの痛みやしびれ、頭痛」などのからだのサインがあることを知ることが重要です。

うつ病治療の第一歩は、こころのサインとからだのサインの両方に対する気づきから始まるといってよいでしょう。

監修:出島診療所長 長崎大学名誉教授 中根 允文 先生

うつ病 ̶セルフチェック̶

最近どうもおかしいな?と感じたら、まず下記のセルフチェックで、ご自身やご家族の「こころとからだ」をチェックしてみませんか?

  • 「いいえ」:0点、「はい」、「時々」:1点、「しばしば」:2点、「常に」:3点  
    ※ただし質問2.4.6.8.10.12.は得点に加えない
  • 合計得点により「10点以下:ほとんど問題なし」、「11~15点:境界」、「16点以上:軽度うつ病の疑い」
点数

1. からだがだるく疲れやすいですか

2. 騒音が気になりますか

3. 最近気が沈んだり気が重くなることはありますか

4. 音楽を聴いて楽しいですか

5. 朝のうち特に無気力ですか

6. 議論に熱中できますか

7. くびすじや肩がこって仕方ないですか

8. 頭痛持ちですか

9. 眠れないで朝早く目覚めることがありますか

10. 事故や怪我をしやすいですか

11. 食事がすすまず味がないですか

12. テレビを見ていて楽しいですか

13. 息がつまって胸苦しくなることがありますか

14. のどの奥に物がつかえている感じがしますか

15. 自分の人生がつまらなく感じますか

16. 仕事の能率が上がらず何をするにもおっくうですか

17. 以前にも現在と似た症状がありましたか

18. 本来は仕事熱心できちょうめんですか

合計

SRQ-D(東邦大学方式うつ病自己評価尺度)

※このチェックリストは、あくまでも自己診断による目安ですので、疑いのある方、心配のある方は医療機関を受診されることをお勧めします。

うつ病を理解する

■一生のなかでうつを経験する割合日本人全体で、約13人に1人

うつ病は「誰もがかかる可能性のある病気」です。 WHOが20歳以上の日本人を対象に行った調査によると、約13人に1人が生涯のうちにうつ病を経験するという結果が出ています。つまり、うつ病は特別な病気ではなく、友人や会社の同僚など、あなたの周囲にひそかにうつ病で苦しむ人がいてもおかしくありませんし、あなた自身がうつ病にかかったとしても不思議ではない病気です。

しかし、日本ではうつ病である人がお医者さんで診てもらう受診率は「29%」とまだまだ少ないという結果が出ています。うつ病のサインが出ていても、ちょっとしたからだの不調と思ってしまっていたり、仕事や家事をこなせていると、うつ病を疑うことなく見逃してしまったりしている可能性があります。また、うつ病であることを「周囲に知られたくない」と治療を受けない場合もあります。

日本では、うつ病が発症する原因を、「こころが弱いから」、「周囲に甘えているから」と捉える人もまだあり、欧米に比べてうつ病に対する社会的な理解が不足しているともいわれています。うつ病の原因は決してそのようなものではなく、このような誤解は患者さんを苦しめるだけでなく、患者さんから適切な治療を受ける機会をも奪ってしまう危険性があります。うつ病は、「誰もがかかる可能性のある病気」です。
だからこそ、うつ病に対する知識を深め、正しく理解することが大切なのだといえるでしょう。

*川上憲人(主任研究者),厚生労働科学研究費補助金 こころの健康科学研究事業「こころの健康についての疫学調査に関する研究」,平成18年度総括・分担研究報告書、2007.

うつ病の主な症状 「こころのサイン」、「からだのサイン」

誰でも「気分が滅入ったり」、「何もやる気がしない」ということがありますが、このような気持ちはたいてい原因となる出来事が解決すると症状がおさまるものです。
ところが、うつ病の場合は「強い憂うつ感」が1週間、2週間と続くことがあります。
そして気分の落ちこみとともに「外出がおっくうだ」、「仕事ができない」などと感じるようになります。
また、うつ病では上記のような「こころ」の症状のほか、「からだ」の調子に症状が出ることもあります。「なかなか寝つけない」といった不眠症状や「食欲低下、からだの痛みやしびれ、頭痛、吐き気」など、さまざまな症状がうつ病のサインであることがあります。
もちろん、すべての症状がうつ病という訳ではありませんが、「こころ」の不調だけでなく「からだ」の不調がうつ病のサインとなることを知っておきましょう。

うつ病の主な症状 「こころのサイン」、「からだのサイン」

さまざまな原因で起こるうつ病

さまざまな原因で起こるうつ病

うつ病はまじめで、きちょうめんな人がかかりやすいと思われています。たしかに、このような性格の人は、うつ病にかかりやすい傾向があるようです。しかし、うつ病にはさまざまなタイプがあり、その人のものごとに対する考え方や周囲の環境、日常生活で感じたストレスなどが複雑にからみあって引き起こされます。なかでも、親しい人との死別や離婚、あるいは病気になるなどといった悲しい、苦しい出来事がストレスとなり、うつ病に大きく関わっていることがあります。それ以外に、昇進や結婚、こどもの独立など、どちらかというと明るい人生の転機であっても、それが急激な変化となって自分の生活に影響を及ぼす場合、自分なりに考え、対処することが難しく、大きなストレスとなってうつ病の原因となることもあるのです。

うつ病の治療法

うつ病は「急性期」から「回復期」へと進み、それぞれの段階によって治療が異なります。
急性期はくすりをのみながら、うつ病のさまざまな症状を取り除いていく期間です。
医師はうつ病と診断したら、まず1種類のくすりを少し処方し、患者さんの様子をみます。その後1~3週間かけ、患者さんの状態にあわせてくすりの種類や量を加減していきます。最終的にくすりが効いているかどうかの判断には、4~6週間の観察が必要といわれています。

急性期→回復期

回復期は症状の改善とともに、社会復帰に向けて元の生活のペースを取り戻していく期間です。回復期に入ってくすりの効果があらわれると「おっくう感」が抜け、意欲が高まっていきます。一方で、この時期はふとしたきっかけで自ら命を絶ってしまう行動にもつながるため、家族や周囲の人はより細心の注意が必要です。
症状がよくなってくると、患者さんによってはくすりをのむ回数を減らしたり、のむことをやめてしまう場合があります。また、周囲の人に「のむのをやめたほうがよいのでは?」といわれてやめてしまうこともありますが、こうした自己判断はうつ病を悪化させたり、症状を長引かせたりするおそれがあります。
うつ病は再発・慢性化しやすいため、症状がよくなっても医師の指示に従ってくすりをのみ続けることがとても大切です。

うつ病の治療に使われるくすり

うつ病のさまざまな症状は、脳の中で気分や意欲に関わる働きをするセロトニンやノルアドレナリンという物質が減ってしまうことで起こると考えられています。
うつ病の治療に使われるくすり(抗うつ薬)は、これらの物質のバランスの乱れを調整する働きがあります。セロトニンやノルアドレナリンを増やす作用のある抗うつ薬の中には、他の物質にも作用するため副作用が多いものもあります。日本で最近になって使用されるようになったSSRI( 選択的セロトニン再取り込み阻害薬)やSNRI(セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬)は、SSRIはセロトニン、SNRIはセロトニンとノルアドレナリンにより限定的に作用するため従来の抗うつ薬に比べて副作用が少ないとされています。
下の図はセロトニンとノルアドレナリンに作用するSNRIのメカニズムをあらわしたものです。

抗うつ薬(SNRI)のメカニズム

「セロトニン」と「ノルアドレナリン」

「セロトニン」と「ノルアドレナリン」という物質は、気分や意欲といった感情面に働きかける役割があるといわれています。この「セロトニン」と「ノルアドレナリン」は疲労やストレスなどを感じると量が減ることがわかっています。これらの物質が減ると、強い憂うつ感や意欲の低下などの「こころのサイン」としてあらわれるほか、不眠症状や疲労感などの「からだのサイン」としてあらわれることがあります。

抗うつ薬の副作用

抗うつ薬は効果があらわれるまでに時間がかかるため、副作用が先にあらわれる場合があります。副作用の症状は、しばらくすると自然に減っていきます。
また、うつ病がもたらす「からだのサイン」をくすりの副作用と感じる場合もあります。副作用の症状がひどいと感じるときや長引く場合には、医師に相談しながらくすりの量や種類を変更するなどして、抗うつ薬による治療そのものは続けていくことが大切です。

主な副作用の症状

うつ病と生活習慣病

メタボリックシンドロームなどで最近よく取り上げられる生活習慣病の患者さんは、うつ病を起こしやすいといわれています。また、がん、心筋梗塞や脳卒中などの病気も同様で、病気そのものがストレスの原因となるほか、くすりの副作用によって脳の働きに影響を及ぼし、うつ病を発症する場合もあります。病気だから元気がないのだと、見過ごされることがあるだけに注意が必要です。また、うつ病をほうっておくと、生活習慣病に対する「病気を治そうという意欲」の低下にもつながりますので、早めに対処することが大切です。

うつ病と上手につきあうには

うつ病と上手につきあううえで、大切なことがいくつかあります。なかでももっとも重要なのは、「こころ」と「からだ」を十分に休養させることです。

十分な休養をとる

うつ病の治療では、くすりを服用するとともに休養を十分にとることが大切です。
休養をマイナスイメージでとらえず、治療の一環として「こころとからだ」をしっかり休めて、治療に専念しましょう。
自宅では、「小さなこどもがいる」、「自営業で人の出入りが多い」、また「家族の理解が得られない」といったときには、入院してじっくり休養するという選択肢もあります。
休養期間でも、なるべく食事は決まった時間帯にとり、一定の睡眠時間を保つなど、生活リズムを乱さないようこころがけることが大切です。

質のよい睡眠を得る

質のよい睡眠を得る

うつ病になると、「寝ようとしても眠れない」、「朝早くに目が覚める」などの症状があらわれることがあります。「ぐっすり寝た」という実感を得るためにも、抗うつ薬とともに睡眠薬を服用することは効果があるとされています。ただ、睡眠は「眠ればいい」ということではなく、 「質のよい睡眠を得る」ことが大切です。そのためには、毎日起きる時間を決める、昼間は少しでもからだを動かすことなどをこころがけ、昼間の活動で疲れたから夜は眠れるようになる、といった自然な睡眠のリズムをつくることがよいでしょう。

あせらずに治療を継続する

うつ病の患者さんは、早く治りたい、早く仕事に復帰したいという強い思いを抱くものです。回復を待つこと自体が、患者さんにとっては苦痛といえるかもしれません。しかし、うつ病の回復には一般的に時間がかかります。大事なのは、それをもどかしく感じてあせらないことです。無理をすると、治りかけた病気が悪化してしまうおそれがあります。
また治療中には、自分に自信を失って人生を左右するような決断を下してしまうこともあります。のちの人生に大きな影響を及ぼす重要な決定は、先送りにしたほうがよい場合があります。

うつ病を再発させない

質のよい睡眠を得る

症状が安定する回復期は、うつ病が悪化したり、いったんよくなっても再発する可能性のある時期です。
医師は患者さんの様子をみながらくすりの量を減らすのか、中止するのか、継続するのかという判断をします。患者さんご自身の判断でくすりの量を減らしたり、通院をやめたりするのは危険です。再発を防止するには、医師から処方されたくすりをきちんと服用しつづけるとともに、再発のサインをキャッチしたら、医師に相談することが大事です。

うつ病は周囲の環境やストレスなどさまざまな原因によって生じる、こころとからだの両方の症状からなる病気です。「こころ」の不調だけでなく「からだ」の不調がうつ病のサインとなることを知り、かかりつけ医や精神科に早めに相談することが重要です。
「こころのサイン」と「からだのサイン」は自分自身からのSOSです。うつ病を理解し、きちんと治療することで、「こころ」と「からだ」の回復を目指しましょう。

関連サイト - うつ病 ~こころとからだ

「うつ病~こころとからだ」では、うつ病に対する正しい理解と早期治療のための活動を広く行っています。

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