高齢化社会を迎え、人生をずっと健康で快適に過ごすためのQOL(Quality of Life=生活の質)向上の一つとして、「自分の歯で食べる」ことの大切さが見直され、8020運動(歯が20本以下になると食べ物がよく噛めなくなるため、80歳まで20本以上自分の歯を維持する)が提唱されています。それでも、残念なことに歯を抜いてしまわなければならない場合もあるかもしれません。
抜歯後の歯をそのままにしておくと、見た目の印象が悪くなるだけでなく、発音にも影響が出てきます。また、食べ物をうまく噛めなくなる咀嚼障害、食べ物が飲み込みにくくなる嚥下障害、歯並びが悪くなるためプラークがつきやすくなり、虫歯・歯周病が悪化したりといった問題がおきてきます。
そこで、悪影響が出ないよう、1本でも歯が抜けたら放置せず、やはり義歯(入れ歯など)の力を借りることが必要になります。
総入れ歯にすると咀嚼(そしゃく)能力は健康なときの2割くらいに落ちてしまい、食生活も一変してしまうでしょう。しかし、入れ歯には、残存組織の保護という目的もあります。入れ歯を装着することで、残っている歯や口腔の粘膜を健康に保っていくことができるのです。ですから、自分に合った入れ歯を正しく装着し、上手につき合っていくことが大切です。
入れ歯には、歯が1本もない状態で入れる「総入れ歯」と、1本以上自分の歯が残っているときに入れる「部分入れ歯」があります。金属、プラスチック、セラミックなどいろいろな種類の素材があり、特徴も異なります。それぞれの歯や口腔の状況、あるいは予算に応じて、歯科医と相談しながら、自分にぴったりの入れ歯をつくってもらうことが大切です。



入れ歯にも通常の歯同様に歯垢や歯石がつきます。自分の歯が残っている場合は、歯垢をそのまま放置しておくと虫歯の原因になり、さらに唾液のカルシウムと反応して歯石となりますので、毎日のお手入れをしっかり行うことが大切です。
きちんと洗って清潔に保たなければ雑菌の温床となり、そのまま使用すれば口臭の原因にもなります。定期的に市販の入れ歯用洗浄剤で除菌するようにしましょう。


総入れ歯を装着していても、残根部(歯の根が残っている部分)がある場合は、その部分のブラッシングが必要です。手入れを怠ると歯周病などになってしまい、歯ぐきが腫れると入れ歯の不具合にもつながります。また、舌や口腔の粘膜には細菌がつきやすいため、舌苔などが見られる場合は、舌ブラシなどを使ってお手入れする必要があります。
入れ歯を使いはじめてからも半年に1度は歯科医へ行き、定期的に虫歯や歯周病などの検査・治療や入れ歯の調整をしてもらいましょう。
入れ歯をして最初の数週間、慣れるまではいろいろと不具合を感じることが多いかもしれません。また、時間がたつにつれて、あごの状態が変化したり、歯ぐきがやせたりして、だんだんと不適合や違和感を覚える場合もあります。あるいは咬合部分がすり減ってくることもあるでしょう。入れ歯に不具合を感じるようなことがあれば、すぐに歯科医に相談しましょう。
入れ歯が正確にフィットしていれば、入れ歯安定剤を使用する必要はないといえますが、すぐ歯科医には行けないような場合などは、歯ぐきを保護して食事を快適に楽しむためにも市販の入れ歯安定剤を上手に利用しましょう。
